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古代ギリシャの音律

参考 藤枝 守 [増補]響きの考古学 2007平凡社

古代の人々は、弦や竹の筒の長さを変え簡単な比率や間隔に基づき音を整え、その楽器とともに歌っていたのではないだろうか。

音律=音の基準。
音の感性が時代の流れのなかでどのように移り変わり、民族や地域において、どのような違いや共通点がみられるのかを考える糸口となる。


ピタゴラス(前582頃~前493頃)。
古代ギリシャの数学者、哲学者。
エーゲ海のサモア生まれ。
生涯が多くの謎に包まれている。
世界に存在するすべてのものを、数の秩序によって説明しようとした。
その教義を貫くため秘密教団までつくり、数が生み出す秩序の中で人生を送ったといわれている。
中世以降のの西欧の思想にも多大な影響を与えた。

オクターブ関係にある音高は、もとの振動数を2の倍数で掛けるか割ることによって得られる。

ヴァイオリンの調弦などでの5度は、うなりのない完全に協和した状態となる。
二つの振動数の比率は3/2となる。
うねりのない音程は「純正」と呼ばれる。
→完全に協和した5度は純正5度と呼ぶことができる。

純正音程は比率を示す分数を用いて音程を計算することができる。
例:オクターブ(2/1)と純正5度(3/2)との関係は2/1÷3/2=4/3の分数の純正4度となる。
  純正5度(3/2)と純正4度(4/3)を加えた場合は3/2×4/3=2/1でオクターブとなる。

純正5度を二回計算すると9/4、長9度が得られる。オクターブ下げると(1/2を掛ける)9/8が得られ、長2度の位置になる。


19世紀にさまざまな民族の音楽の研究をしたイギリスの民族音楽学者、アレクサンダー・J・エリスは、音階を構成する音程を細かく表示するためにセントと言う単位を考案した。
セント値の計測により、さまざまな民族の音律や音階の特徴が明らかになり、「比較音楽学」という分野の研究が進展した。
1オクターブを1200セントとし、十二平均律では半音は100セントとなる。
十二平均律での半音は、12√2(=1.059463)のような無理数となる。
セントによって平均律と純正音程の違いもみることができる。
純正5度は702セント。平均律より2セント高い。

アレクサンダー・J・エリス(1814~90)
イギリスの民族音楽学者。
セントによる音程の計測法を考案した。著書に「諸民族の音階」など。


純正5度を積み重ねていくと、12個の異なる音高をめぐり、再び戻ってくる音列ができる。
この五度音程の音列を五度圏という。
はじめの5つを取りだして「C-G-D-A-E」、C音から順番に並び替えると「C-D-E-G-A」となり、五音音階(ペンタトニック)が生まれる。
中国やエジプトをはじめ、さまざまな民族は五度の音程を聴きだし、積み重ねることによって楽器を調律したり、五音音階などの音階を編み出していった。

 

ピタゴラスは二十歳をすぎるとエジプトに留学して天文学や哲学、数理学など様々な学問を学んだといわれる。
そして数の秩序を音の世界に適用することを試みる。

古代オリエント文明の中心であるエジプトではハープ、リュート、縦型のフルートなど楽器であふれていたことがレリーフや壁画でわかっている。
それらはオクターブと純正5度、純正4度というシンプルな音程で調律されていたといわれている。
→Cからはじめ、5度上のG、4度下げてD、Cの4度上F、5度下のB♭など。[C-B♭-D-F-G]

古代エジプトに影響を与えた古代バビロニアでも、ハープを純正5度で調律する方法が存在していたことが楔形文字から解読されている。
紀元前18世紀頃のバビロニアの人たちはかなりの数学の知識をもっていた。
弦の長さと音高とが数比的な関係にあることを理解しながら楽器の調律をしていた。


単純な純正音程は耳によって行える。
クルト・ザックス(1881~1959)
比較音楽の基礎を築いたドイツの音楽学者。
ナチスの圧制を逃れてフランスに移り、おちにアメリカに渡り、ニューヨーク大学やコロンビア大学などで教鞭をとった。
彼の「音楽の起源」のなかで純正音程による調律の方法を「上下反復原理」としている。

ザックスは紀元前12世紀頃のエジプト王朝の墳墓から出土した笛の指孔の間隔からどのような音律が生み出されたか推測している。
90センチの笛の全長の8/12、9/12、10/12に指孔があり、その比率から計算すると12/12(すべて塞いだ場合の最低音)、12/10/(=6/5、316セント)、12/9(=4/3、498セント)、12/8(=3/2、702セント、純正5度)となる。
純正5度の音域のなかに四つの音階が構成されていた。
このような長さの分割によるによる指孔の位置の決め方を「等間隔分割の原理」とよんでいる。
ハープのような開放弦の楽器には「上下反復原理」による調律法が、笛やフレットをもつリュートのような楽器には「等間隔分割の原理」という調律法が適用されていた。

 

ピタゴラスは協和する音程の秩序を解明しようと試みた。
6世紀のローマの哲学者で音楽理論家のボエティウスは著書「音楽教程」のなかでピタゴラスのことを記している。
鍛冶屋を通りかかったピタゴラスは、ハンマーが打ち鳴らす音を耳にして、協和する音とそうでない音を聴き分けたという。
ハンマーの重さが関係していると思い、量ってみると4本のハンマーの重さの比率が12/9/8/6になっていて、残りの一本がそれらの比率からはずれていた。
12/6のハンマーがオクターブを、12/8と9/6の二組が五度を、12/9と8/6が4度を、9/8が全音を響かせていたことに気づいて家に帰り弦を使って実験をはじめたという。
※実際にはハンマーの重さと音程は数比的な関係にないことが証明されている。

ボエティウス(480頃~524頃)
イタリアの哲学者、政治家。
東ゴートの王、テオドリクスに仕えたが、のちに反逆罪に問われ、処刑された。
「音楽教程」で古代ギリシャの音楽理論を紹介、西欧の音楽理論に多大な影響を与え、中世のスコラ哲学の礎となった。


ピタゴラスはその後、モノコード(一弦琴)を使って行った。
弦は12の部分に分割され、それに基づき12、9、8、6の四つの数を組み合わせながら様々な比率が生み出された。
この四つからはオクターブ、純正4度、純正5度、全音が得られるが、純正5度の累積で12個の音も得られる。
累積7回目までに、C-G-D-A-E-B-F♯-Cという全音階(ディアトニック・スケール)となる。
F♯がCの純正4度上のFに置き換えられ、ピタゴラス音律が生み出された。

C-D-E-F-G-A-B-Cは
1/1、9/8、81/64、4/3、3/2、27/16、243/128、2/1
0セント、204セント、408セント、498セント、702セント、906セント、1110セント、1200セント
隣接音との比率は9/8、9/8、256/243、9/8、9/8、9/8、256/243となる。
9/8(204セント)、このピタゴラス音律の全音は「トノス」と呼ばれた。平均律よりも4セント広い。
256/243(90セント)、この半音は「リンマ」と呼ばれ、平均律より10セントも狭く、ピタゴラス音律を特徴づけている。
3度(C-E)は81/64という高い数値の比率で「ディトノス」と呼ばれる。決して溶け合ってはいない。
また、純正5度累積を12回繰り返すと、元の音に戻ってくるが、もとの音よりも24セント(1/8)ほど高い。「ピタゴラス・コンマ」と呼ばれる。
この「ピタゴラス・コンマ」と溶け合わない3度がピタゴラス音律の問題点だった。

協和性は歴史的な変遷があった。
はじめはオクターブや5度、4度だけが協和音とされていた。
しだいに3度も協和音として受け入れられていった。
やがて不協和音が協和音へ解決されると言う進行が近代の機能的な和声を確立させた。

●テトラコード

古代ギリシャでは「テトラコード」と呼ばれる単位によって音階が構成された。
→4度関係の二つの音を固定しておき、そのあいだに二つの音を挟み込んだ四音の音列のこと。挟み込む音程によって3種に分類される。
・ディアトニック・・・2個の全音と1個の半音。
・クロマティック・・・1個の全音半と2個の半音。
・エンハーモニック・・・1個の2全音と2個の微分音(半音を2分割)。

テトラコードを連結することによって、広い音域を持つ音階を導くこともできる。
二つのテトラコードの端の音を重複させて連結する「接続型」と、間に1個の全音をはさむ「分離型」がある。
この二つの連結方法によって、2オクターブにも及ぶ「大完全音階」とよばれるものも生みだされた。真ん中に位置する音は「メセー」と呼ばれた。

一番古いテトラコードはエンハーモニックだといわれている。
特異な微分音程はピュクノンといわれる。
微分音程が用いられたのには「アウロス」という楽器が関係している。
アウロスは二本の管とリードをもち、古代ギリシャでは重要な楽器だった。
古代フリジアの伝説的な笛吹き、オリンポスによってギリシャに伝えられたといわれている。
オリンポスはギリシャ音楽の父といわれ、ギリシャ音楽に革新をもたらした。
アリストクセノスはオリンポスがエンハーモニックを考案したと伝えている。
指孔を加減することで微分音程を生み出したといわれる。
微分音程に基づいてキタラのような弦楽器を調律するため、エンハーモニックが考案された。

※アウロス
アウロスは、キタラやリラと並ぶ古代ギリシャの代表的な管楽器。二本の葦の管を一組とする。
オーボエのようにリードをもち、微分音を奏でられる。

※オリンポス(前700頃)
古代フリギアの伝説上のアウロス奏者で作曲家。
ギリシャ音楽に多くの革新をもたらした。

※アリストクセノス(前375頃~)
古代ギリシャの音楽理論家。アリストテレスの弟子。
ピタゴラス学派に対抗して、耳の経験に基づく音律の理論化を主張。

※キタラ
古代ギリシャの撥弦楽器。二本の柱のあいだに横木をつけ、その横木と共鳴部である胴体に数本の弦が張られている。

エンハーモニックの前段階に長3度を含むペンタトニックが存在した。
オリンポスが考案したといわれ「オリンポスの音階」とよばれる。
C-D♭-F-G-A♭-C
短2度、長3度の組み合わせを二つ連結している。
これの半音が二つに分割されてエンハーモニックが生まれた。

現在残されている古代ギリシャのメロディのひとつ、「デルフィの讃歌」はオリンポスの音階に基づいている。
ザックスは日本の箏の「雲井」という旋法と「オリンポス」の音階が同じ構成であると指摘。

古代ギリシャの音律を研究したハリー・パーチは「古代ギリシャ音階による二つの習作」を作曲している。
一曲目がオリンポスの音階に基づいている。


エンハーモニックは古代ギリシャで重要なテトラコードだった。
古代ギリシャ音楽の断片「オレステス」で微分音程が重要な役割を担っている。
エンハーモニックはヘレニズム時代にしだいに失われ、紀元2世紀にはディアトニックが支配していった。


アリストクセノスはテトラコードの3種類を厳密に規定する方法を考案。
テトラコードを30の単位(半音が6つ)に分割した。
この単位を活用して「クロアイ」と呼ばれる種類によってテトラコードを分類している。
また、テトラコードの上位に位置する音程が大きければ「ソフト(やわらかい)」、小さければ「インテンス(硬い、緊張した)」となる接頭語がつけられた。
ソフトのテトラコードは魂を弱め、インテンスは魂を高揚させ元気付けるものとみなされていた。

 

ディアトニック(半音+全音+全音)をピタゴラス音律で調律すると、二つの全音が作るディノトス(81/64)が耳障りになる。
これを純正3度(5/4)に置き換える方法が模索された。
→二つあるディノトスの片方を81/80の音程だけ減らして純正3度を導こうとした。
このような補正はディデュモスによって行われたとプトレマイオスが伝えている。
補正すると、
16/15、10/9、9/8となる。
9/8(大全音)と10/9(小全音)といわれる二つの全音がうまれた。
この二つの差はちょうど補正のための微分音程81/80に相当し、「ディデュモスのコンマ」または「シントニック・コンマ」とよばれた。

プトレマイオスはその構成の大全音と小全音を入れ換え、
16/15、9/8、10/9のかたちにした。

アルキュタスはディアトニックを
28/27、8/7、9/8に分割する方法を考案した。

クロマティックやエンハーモニックでは、このような比率の操作が駆使され、さらに多様化が進んだ。

クロマティックの場合、まずテトラコードを全音と短3度の2種類の音程によって分割すると
「10/9、6/5」、「9/8、32/27」、「8/7、7/8」の三つの組み合わせが考えられる。
その全音をさらに分割。
アルキュタスは9/8を分割して「28/27、243/224、32/27」のようなクロマティックを考案。
プトレマイオスは10/9を分割し「28/27、15/14、6/5」や、
8/7を分割した「22/21、12/11、7/6」を考案した。

エンハーモニックの場合。
アルキュタスは16/15という半音を2分割し、「28/27、36/35、5/4」とした。
ハリー・パーチの「古代ギリシャ音階による二つの習作」の2曲目でこのエンハーモニックが使われている。


プトレマイオスは比率を駆使しさまざまなテトラコードをうみだすことに没頭。
過分数(3/2、4/3など分子が分母よりもひとつ高い分数)を基盤に音程を算出しようとした。(こだわり)
※過分数がつくる音程関係は倍音列の隣り合った音程関係と一致する。この時代にはまだ倍音列が発見されていない。
アルキュタスやディディデュモスが考案したものも加え、テトラコードのリストをのこしたが、
彼の比率ゲームの産物であり、実際の音楽とは関係のない存在であった。

古代ギリシャの音楽理論を中世に伝えた6世紀のボエティウスはピタゴラスについては詳しく伝えたものの、プトレマイオスたちのテトラコードの思案についてはほとんど伝えず。
しかし約1500年後にプトレマイオスの考案した「インテンス・ディアトニック」が純正調の音階となってよみがえった。
また、このプトレマイオスのテトラコードがひとつの要因となり西欧の音律の歴史は大きな転換を迎えた。
プトレマイオスの「インテンス・ディアトニック」
1/1、9/8、5/4、4/3、3/2、5/3、15/8、2/1。

※ディデュモス(前63?~?)
古代ギリシャの音楽理論家。ピタゴラス主義を継承。
膨大な著作は失われているが、プトレマイオスによってその内容が言及されている。

※プトレマイオス
二世紀中頃に活躍した古代ギリシャの天文学者。
天動説を主張。
著作「Harmonica」は古代ギリシャの音楽理論を集大成したもので西欧に大きな影響を与えた。

※アルキュタス(前430~前365)
古代ギリシャの哲学者、数学者。ピタゴラス学派に属す。
立方体の倍積問題を解き、木製の空を飛ぶ鳥をつくったといわれる。

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プロフィール
なまえ:
成瀬つばさ
誕生日:
1986/12/24
職業:
メディアアーティスト学生
自己アピールらん:
音大卒の美大院生。
絵を描いたり音のおもちゃを
つくったりしてます。
なかよくしてね。



国立音楽大学
音楽文化デザイン学科
コンピュータ音楽系 卒業

多摩美術大学 大学院
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