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東京藝術大学 創立120周年企画
日本電子音楽の創成期
~藝大音響研究室の活動~
2008年1月4日・5日・6日
藝大音響研究室のアナログシンセサイザ展示&コンサート
東京藝術大学音楽学部 第1ホールにて
満足度:☆☆☆
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ホールに入場すると、電子音で部屋全体が包まれている状態でした。
5台もの巨大なアナログシンセサイザが公開され、自由に試奏できるようにセッティングされていました。
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・ブックラ100型
ドン・ブックラが開発した電子楽器。
実験音楽の為に開発した装置であり、白黒鍵盤は備え付けられていない。
代わりに付いているタッチ・キーボードは、ひとつひとつ自由にチューニングが可能。
音声信号はミニプラグ、制御系の信号はバナナ・プラグのケーブルで接続する。
スプリング・リバーブや16ステップのシーケンサーも搭載。
サイン波からノコギリ波に徐々に変化させられたりと、ユニークな機能もある。
・モーグIII-P
ロバート・モーグが開発。
現在のシンセサイザーの原型ともいえる機能を搭載している。
平均律で演奏できる鍵盤がついているため、楽器として様々なジャンルで活用された。
ポルタメント演奏が可能なリボンコントローラーも搭載。
冨田勲もこのシンセサイザによって数々の作品を作り上げた。
・アープ2500
発振器、フィルター、アンプなど基本システムはモーグと同様だが、接続方法が特徴的。
各セクションの入出力をマトリックス上のスイッチボードで制御する構造になっている。
ケーブルを使わずに接続をするアイデアは斬新だが、音漏れなどの問題もあった。
白黒がリバースしている鍵盤は独立しており、右側、下鍵盤とあわせて3台分のCVを出力可能。
後に登場するアープ・オデッセイの原型となった。
・ローランド・システム700
1976年にローランド社が開発した国内産シンセ。
最高峰の機能を搭載している。
発振器、フィルター、アンプ以外にもリバーブ、ディレイ、フェイズ・シフター等のエフェクターも完備。
外部入力をコントロール信号に変えるインターフェイスも加えられている。
各入出力はフォーン端子のケーブルで接続する。
中央にある巨大なシーケンサでは、3チャンネル、12ステップの設定が可能。
・ローランド・システム100M
システム700をコンパクトにしたもので、最も普及したモジュラー・シンセ。
発振器、フィルター、アンプなど、各機能がボックス型のユニットにまとまっている。
そのため、ユーザーが自由にチョイスしてシステムを組むことが可能。
他のシンセと比べ、非常に動作が安定している。
入出力はミニ端子のケーブルによる。
多くの教育機関で音作りを学ぶ教材として活躍しているシンセサイザ。
他にも、アナログシンセの基盤や、楽譜なども展示されていた。
写真はカールハインツ・シュトックハウゼン作曲の「Study II」の楽譜。
上段に音程が周波数で、下段にアンプリチュードがdbでそれぞれ示されている。
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コンサートでは、展示されていたシンセサイザを用いて作曲された新作を何曲か演奏。
作曲者自らシンセサイザを操作し、それぞれ斬新な解釈で曲中に電子音を奏でていました。
最後には、楽譜の展示もされていたシュトックハウゼンの作品がアナログテープにより再生。
現代の音律
19世紀半ばに平均律の導入。
マーラーはミーントーンの調律が行われなくなることを嘆き、西洋音楽にとって大きな損失であると語った。
調の固有の性格が失われたため。
失われた調性の色彩感は、オーケストラの発展に伴い、楽器の多用な音色によって補われたと考えられる。
18世紀から19世紀には西欧音楽が世界中に伝播、演奏活動・音楽教育のために大量の楽器が必要とされた。
楽器の量産が行われると、経済効率と機能上の統一のために音律、音色も規格化される。
マリンバはもともと民族楽器であったが、西洋楽器として導入されるとすべての鍵盤が同じように響くように規格化された。
本来自然倍音を利用していた金管楽器も、改良され平均律を基準とした。
20世紀には様々な楽器が改良され、発明された。
また、十二音技法が作曲の基盤となり、「無調」スタイルが確立される。
より複雑で構築的な作曲技法を編み出す方向に展開していった。
聴衆にとっては、耳に居心地が良いものではなく「聴いても良くわからない」という印象を与えた。
多くの聴衆が離れた一因には、無批判に受け入れた平均律の存在もあるように思える。
1910年頃、社会学者のマックス・ウェーバーは著書「音楽社会学」で歌手の音楽訓練について触れている。
モノコードによる純正調で行われていた訓練がピアノで行われるようになり「精緻な聴覚が得られないことが明らかだ」と述べている。
しかし、平均律の音響的な欠陥は重大な問題とされず、機能的で効率的な長所だけがクローズアップされた。
テンペラメントの方法が模索された16世紀から17世紀頃には、半音より狭い微分音程が設定された鍵盤楽器が試作された。
ニコーラ・ヴィンチェンチーノは、古代ギリシャのディアトニック、クロマティック、エンハーモニックの三種類のテトラコードが
ひとつの鍵盤上で演奏できる「アルキチェンバロ」を発明した。
二段鍵盤で、オクターブは36個の鍵盤で構成されている。
古代ギリシャの音楽理論を復活させる意図で作られたが、独創的な楽器のため受け入れられなかった。
ミーントーンのウルフを回避するため、オクターブに17音、19音、31音などの配列をもった楽器も試作された。
黒鍵を分割し、異名同音を異なる鍵盤に振り分け、#系と♭系の調が弾きわけられるようにしてある。
ところが、ウェル・テンペラメントが出現すると、エンハーモニックな音程は同一の音高とみなされてしまった。
20世紀には、平均律をさらに細分化しようとする作曲家が現れた。
東欧モラヴィア地方の作曲家、アロイス・ハーバは半音を二分割した四分音や、六分音による微分音(マイクロトーナル)を理論化し、
作曲や四分音ピアノなどの楽器製作に適用した。
ハーバがたえず耳にしたモラヴィア地方の民謡がもつ細やかな抑揚やニュアンスは、半音より狭い音程を必要としたのだ。
ロシアの作曲家、イヴァン・ヴィシネグラーツキィも「超半音階主義」という実験的な方向を打ち立てながら、四分音を積極的に導入。
平均律では得られない、微細な和声進行や音響が生み出されたが、音楽的には後期ロマン派のような叙情的な傾向の範囲にとどまる。
20世紀初めに、東欧やロシアなど、西欧とは異なった耳を持つ作曲家によって平均律を微分音化する試みが行われた。
メキシコの作曲家、ヴァイオリニストのフリアン・カリージョは、ヴァイオリンの弦による実験で、オクターブを96分割する方法を考案した。
チャールズ・アイヴスも微分音程に興味を示し、アイヴスの父は四分音が出せる音響装置を製作したとも伝えられる。
「四分音の3つのピアノ曲」という二台のピアノのための作品を残している。
二台のピアノは、基準音を四分音ずらされ、平均律によって調律されている。
●ハリー・パーチの音律
アメリカの実験作曲家、ハリー・パーチはまったくあらたな音律理論を築きあげた。
近代以降の、身体という存在をまったく感じさせない無機的な音の世界をつくりだしている抽象的な表現を否定し、「身体の音楽」を目指した。
ピアノのような近代楽器は放棄され、生身の身体や肉声に対応するようなオリジナルの楽器が製作された。
その楽器に適用するための独自な音律のシステムが長い時間をかけて理論化された。
ピタゴラス音律のように、ある音を基音(ユニティ(unity))に設定し、全ての音程を整数の比率によって導き出す方法に徹した。
15世紀頃の声楽曲に適応された純正調は5までの素数が比率のなかに適用されていたが、
パーチの音律では11までの素数が使われた。
「11リミット」の純正調と考えられる。(ピタゴラス音律は3リミットの純正調)
純正音程は様々な物体を共振させる力を持っている。身体も例外ではない。
自らの音律のことは「モノフォニー」とよんでいる。
パーチ自身の声が出しうる最低音Gがユニティとして設定され、音律が組み立てられる。
例:
2、3、5など素数をパーチは「アイデンティティ」とよんでいる。
三つの素数による組み合わせ可能な比率は全部で7種。
オクターブに収めると
1/1C、6/5E♭、5/4E、4/3F、3/2G、8/5A♭、5/3A、2/1C
となる。
音程はシンメトリーに配置される。
分母と分子が同じ数値になるものをグループに分類すると
2が分母・・・・1/1、5/4、3/2
3が分母・・・・4/3、5/3、3/3
5を分母・・・・8/5、5/5、6/5
2を分子・・・・1/1、8/5、4/3
3を分子・・・・3/2、6/5、3/3
5を分子・・・・5/4、5/5、5/3
となる。
同じ数値で分母を共有する3つの音高は「和声的分割」によって導かれ、「オートナリティ(Otonality)」という調性をかたちづくる。
同じ数値で分子を共有する3つの音高は「算術的分割」によって導かれ、「ユートナリティ(Utonality)」という調性を生む。
これが独自の作曲理論や調律の基盤となっている。
実際のパーチの音律ではアイデンティティは2、3、5、7、9、11の六つ。
29個の音高が導かれ、調性の種類も12種類に増大する。
29個の音高を音階として並べると、音程が幅広くなっている箇所ができる。
そこにあらたな音高が挿入され、「四十三音音階」が生み出された。
シンメトリーな音程の配列で、さまざまなサイズの微小音程で構成される。
微分的な音階は、パーチ自身の英語による話し言葉に対応している。
足踏みオルガンのリードを調律し、43音階のすべてが出せる「クロメディオン」という楽器を製作している。
鍵盤に音高の比率が書き込まれ、持続音によって他の楽器の調律にも用いられる。
古代ギリシャの楽器をモデルとした「キタラ」、巨大な鍵盤の「ベース・マリンバ」多数の弦を持つ「ハーモニック・カノン」など
多数のパーチの楽器はすべて43音階に基づき調律されている。
演奏はすべてダイナミックなアクションが必然的に引き起こされる。
主著「ある音楽の起源」で自らの音律の理論や楽器の構造、演奏法を詳しく記している。
●ルー・ハリソンの音律
12音技法での無調のスタイルに疑問を感じたルー・ハリソンは、音の数を限定し、純正調などの音律を適用した。
1940年代、打楽器アンサンブルの作品で、ゴング、ベル、車のブレーキドラムなど日常的な打楽器を用いた。
平均律の音程からははみだしているが、メロディに独特の色合いや抑揚を与えていることを実感。
その後パーチの「ある音楽の起源」に出会い、純正調の可能性を感じる。
・1950年大後半、アメリカ西海岸にインドネシアのガムラン楽器が持ち込まれる。
以来西海岸を中心に大学のサークルなどで演奏団体を結成、アメリカン・ガムランの運動が巻き起こった。
いくつかのサークルではアルミ板などで楽器をつくったり、自作曲をレパートリーにもした。
ルー・ハリソンは「アメリカン・ガムランの父」とよばれ、指導的な立場にあった。
楽器製作家のビル・コルヴィックとともにガムラン楽器を製作。
ガムランの作曲を通じて先方や音律の可能性を模索した。
ヴァイオリンと小編成のアンサンブルによる「スレンドロの協奏曲」
ガムランの影響が色濃い。
※スレンドロとはインドネシア、ジャワ地方に見られる5音音階に基づく旋法のひとつ。半音が含まれない。
他にもジャワ地方には「ペロッグ」という旋法がある。半音が含まれ、7音音階の中の5音が使用される。
半音を含まない音階は五度圏によって形成され、世界中でポピュラー。
それに対して、半音を含む音階は独特の印象を与える。ペロッグ、沖縄の琉球音階、都節音階など。
日本では半音を含まないものを「陽旋法」、含むものを「陰旋法」としている。
ハリソンの覚書を集めた著書「ルー・ハリソンのワールドミュージック入門(Music Primer)」では旋法はあらゆる文化に広がり、人間にとって重要な遺産であると述べる。
旋法的な音楽を「異国風」とする西欧の偏見を批判した。
純正調では全音の幅もいくつもの種類が存在する。
純正音程を使って旋法が持つ多様性に対応しようとした。
「四つの厳格な歌」
ではネイティブ・ネイティブアメリカンのナハボ族のテキストをともなう八人のバリトンとオーケストラによる作品。
はじめて純正調による旋法が適用された。
ピアノは純正調による半音階で調律される。
「太平洋のロンド」
オーケストラ作品。ロンド形式、純正調による旋法。
全体は七楽章、奇数番目の楽章は五音旋法、第二楽章は六音旋法、第四楽章は七音旋法、第六楽章のみ平均律の12音技法。
中国や韓国の宮廷音楽、カリフォルニア、メキシコなどのスタイル、楽器が取り入れられた。
音高を固定しておくスタイルは「厳格なスタイル(strict style)」とよぶ。
「自由なスタイル(free style)」という方法は、楽譜上に音程関係の比率が書き込まれる。
演奏者はその比率の音を出す訓練が必要になる。
1990年代、あらたな音律の方法でガムランを調律。
ボエティウスの「音楽の教程」からヒントを得た。
純正4度を過分数の比率によって分割「16/15+5/4」「10/9+6/5」「8/7+7/6」の三種類が考えられる。
そのテトラコードに基づく音律でガムラン楽器が製作された。
「太平洋のオマージュ」はそのあらたなガムランのための作品。
2002年、「Solo Keyboards」リリース。
さまざまな鍵盤楽器の小品集。
それぞれの作品に、ウェル・テンペラメントによる調律法が適用されている。
2003年2月2日、ハリソンは心臓発作で亡くなった。
享年85歳。
ギター・ソロのための「ネック・チャンドからのシーン」が遺作。
ナショナル・スチール・ギターによる作品。
※1920年代、電気的な増幅が不可能な時期に、ジャズバンドで音量不足を補うために考案された楽器。
特別な指版により、純正調に調律されている。
※マックス・ウェーバー(1864~1920)
ドイツの経済学者、社会学者。
「音楽社会学」では音律や楽器を中心に西欧音楽が合理化される過程が明確に述べられている。
※ニコーラ・ヴィチェンチーノ(1511~1576)
イタリアの作曲家、理論家。
古代ギリシャの音楽理論の復活を試みたが、多くの反論を招いたといわれる。
六つの鍵盤をもつアルキチェンバロやアルチオルガーノを考案。
※アロイス・ハーバ(1893~1973)
チェコスロヴァキアの作曲家。
微分音の可能性を追求した。
四分音によるオペラ「母-Matka」が有名。
微分音のための鍵盤楽器や管楽器を開発した。
※イヴァン・ヴィシネグラーツキィ(1893~1979)
ロシアの作曲家。
スクリャービンの影響を受け、「ロシア・アヴァンギャルド」の作曲家でもあった。
フランスに亡命後も、四分音による微分音程的な方向を堅持していった。
※フリアン・カリージョ(1875~1965)
メキシコの作曲家、ヴァイオリン奏者、指揮者。
20年代から微分音を組織的に用いた作曲を始め、微分音のための数字譜や楽器も考案している。
※チャールズ・アイヴス(1874~1954)
アメリカの作曲家。
トーン・クラスターや微分音などのあらたな音素材を積極的に取り込み、また、コラージュやパッチワーク的な手法を駆使しながら
アメリカの実験的な音楽の源泉となっている。
ニューイングランド地方の超絶主義の哲学に大きな影響を受けている。
※ハリー・パーチ(1901~1976)
アメリカの実験音楽家。
ホーボー(放浪者)とよばれる生活を十年以上にわたって行い、このような体験が「バーストウ」、「USハイボール」などの作品に反映されている。
純正調や楽器づくり、身体性など、その一貫した創作態度が見直されている。
※ルー・ハリソン(1917~2003)
オレゴン生まれのアメリカの作曲家。シェーンベルクとカウエルに師事。ガムランなどのアジアの音楽に造詣が深く、また、中世の西欧やさまざまの民族の様式を融合した地球的なスコープの音楽を生み出している。
絵を描いたり音のおもちゃを
つくったりしてます。
なかよくしてね。
国立音楽大学
音楽文化デザイン学科
コンピュータ音楽系 卒業
多摩美術大学 大学院
情報デザイン領域